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●●  座談会「〜作品を通して伝えたい子育て家庭の声、支援者の関わり〜」 ●●
◆開催日    平成22年12月1日
◆座談会メンバー
審査委員長 新澤誠治  (子育て支援推進センターみずべの会代表)
審査委員 おちとよこ  (ジャーナリスト、作家、高齢問題研究家)
  きたやまようこ (絵本作家)
  柴田愛子  (りんごの木子どもクラブ代表、絵本作家)
  新沢としひこ  (シンガーソングライター)
  中橋惠美子  (NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事)
司会 奥山千鶴子  (NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事長)
1.親子と地域をつなぐ通過点
2.お父さんも交わって
3.誰もが自然体でいい
4.育ちと向きあい学びあう
5.飾らない“あなたの物語”を
6.子育てを支える人たちと親の声を継続して伝えていくことの大切さ
親子と地域をつなぐ通過点

中橋
今年は、具体的なエピソードよりも「ひろばは素敵な場所だからぜひ来て」といった思いを伝える作品が多かったですが、それは子育てひろばへの愛着のあらわれのように感じました。
きたやま
昨年は、母親たちの感情がストレートに伝わる文章が目につきましたが、今年はスタッフからの応募も増え、全体を通して子育てひろばの良さが見えてきて、それぞれの土地でそれぞれの場として育っていることがよくわかりました。
おち
今年は、孤独な子育てに苦しんでいる母親だけでなく、父親や祖母や外国の方、転勤族や双子の母親などいろんな利用者の顔が見えてきましたね。
柴田
ようやく“地域にあるのが当たり前”な存在になってきたのでしょう。しかしその一方で、「人の輪に入れない」といった相談も増えています。そんな不安にこたえるようなエピソードがもっとあればいいなと思いました。
新沢としひこ
人見知りの人だけでなく、年齢や言葉の違い、地域性といったハードルがあり、それをどう乗り越えるかが、子育ての中でひとつの課題になっていますよね。

奥山
今年も「独りで不安を抱えていたけど行って良かった」といった文章が出ており、昨年、多くの作品に語られていた“扉を開ける瞬間”の不安を、まだまだたくさんの母親が抱えていることに気づかされました。その見えない壁をなくしていくことが、子育てひろばの大きな課題ですね。
おち
今年は、扉を開けた後のさまざまな感じ方も見えてきて、子育てひろばが母子だけの場ではなく、まさに“人と人をつなぐ地域の拠点”になっていることを強く感じました。
新沢としひこ
巣立った子どもやボランティアの視点も見えてきて、隅っこの小さなエピソードが積み重なって子育てひろばが成り立っていることがよくわかりました。
奥山
子育て支援の事業が始まって10〜20年の間に、通っていた子どもが成長し、母親はスタッフになり、そこからまた新たなエピソードが出てきましたよね。子育てひろばをきっかけに地域の生活になじめるようになったという作品がありましたが、子育てひろばは、「親子と地域をつなぐ通過点」でいいのだなと改めて思いました。 

 
 
お父さんも交わって

新澤誠治
作品を読んで、子育てにストレスを感じている母親が多い中で、子育てひろばがその一人ひとりの想いに応えた働きをしていることに、改めて感心しました。昨年は子育て支援の政策で子ども手当などの「現金給付」か支援サービスなどの「現物支給」かが話題になりましたが、やはり「現物支給」が大事ですね。また、「イクメン」が話題となり、父親が参加し交流会や絵本の読み聞かせを始めたという記録もありましたね。おばあちゃんも登場し世代間交流もあり、新しいひろばのできてくる兆しを感じますね。

新沢としひこ
確かに“イクメンブーム”を象徴するように、文章にも写真にも父親が主役の作品が出てきましたよね。

柴田
実際、育児休暇をとる男性は増え、「最初は会社が恋しかったけど、子育ての日常の中で効率を考え、家事や育児がついに仕事になった」といった父親の声を耳にするようにもなりました。

新沢としひこ
昔は所帯じみたイメージをもたれるからと、男性は滅多に育児の話をしませんでしたが、今は堂々と「家族が大事」と言えるようになりましたね。

奥山
夫と子育て支援センターで待ち合わせる作品がありましたが、実際、週末は父親の姿が増えています。子どもは勝手知ったるひろばで違和感なく遊び、父親は新聞を読んでいるといった光景も少なくありません。
中橋
受け入れる側も、もっと構えずに父親を受け入れることが大事ですね。

新澤誠治
育児に参加する若い男性が増えている一方、夫や舅の理解が得られず、まだリフレッシュ一時保育に子どもを預けることを「お前は子育てが仕事なのだから」と反対される例もあります。子育てひろばの活動がこうした偏見に新たな風を吹き込んでいく希望を感じています。

奥山

子どもがケガをしたら夫に「専業で見ているのにダメじゃないか!」と叱られたという声も時々耳にします。

柴田
まだまだ子どもの日常を知らない父親が多いのよ。

奥山

子育てひろばに来てどんどん子どもたちに関わってほしいですね。

柴田

ただボーッとしているだけでもいいのよね。父親が居るだけで場の雰囲気がゆるむことがあります。比較的キチッとした母親たちの中で、子どもたちにとってホッとできる存在なのかもしれません。
新沢としひこ

男性には、子どもみたいなところがあるので、例えば、一人でブロック遊びをしている男児の隣で、一緒に黙々と遊ぶうち、その子の隠れた個性が見えてきたり、友達のように響きあうものを感じたりすることがある。子どもへのアプローチが、女性とは違うからいい。自分が夢中になりすぎちゃ困るけど、そのままで子どもたちに接してほしいと思います。

誰もが自然体でいい

奥山
写真や文章から見えてきた子どもの様子はどうでしたか?

柴田

ぐっすり眠っている子どもの写真が印象的でした。飾らない自然な雰囲気がいい。
きたやま

ひろばで思いっきり遊んだことが伝わってきますよね。

中橋

ボランティアの男子中学生が子どもの頃、子育てひろばで「大事にしてもらった」と書いていた言葉も印象的でした。自分の居場所だと子どもに思ってもらえることは、素晴らしいことですね。

新沢としひこ

以前通っていた子どもが雨宿りに立ち寄る話にも、子どもが安心できる場だと思っていることが伝わってきました。

きたやま

幼くても自分に関心を持ってもらったことは、ちゃんと心に残っているのよね。

新沢としひこ

母親がいつもより優しくなれる場所では、子どもも安心して眠ってしまう。母親にとって居心地のいい場であれば、子どもにも心地いい空間として記憶に残るのでしょう。

奥山

乳幼児たちが遊んでいる写真からは、言葉を交わさない子ども同士、あうんの呼吸でコミュニケーションしていることが伝わってきました。
柴田
言葉でしかコミュニケーションとれないのは、大人だけなのよね。

新沢としひこ

だから、無口な父親が居てもいい。不器用な方が、子どもとうまくコミュニケーションとれる事もあります。スタッフや実習生の中にもおとなしい人がいていい。みんなが元気印だと、逆に子どもが引いてしまうこともあります。

柴田

作り笑顔だと、すぐに子どもに見抜かれてしまう。

中橋

笑顔だけがいいわけではなく、いろんな人のいろんな顔があっていいのよね。

奥山

笑顔を安売りにしない“クールビューティー”がいていい。子どもも大人もみんなが自然体で居られることが大事ですね。

育ちと向きあい学びあう

新澤誠治
緊張している母親を迎えるには、やはり笑顔が大事ですね。「大丈夫」「心配ないよ」と、援助の言葉を投げかけているのは大切なことだなと思いました。作品に登場する子育てひろばを見ていると、人との関わりがつくりだされ、スタッフの出会い、子育て仲間との出会いから、新しいドラマが生まれてくるのを感じます。

新沢としひこ

作品の子育てひろばには、「こうしないさい」がない。利用者が「こうじゃなきゃダメ」と思い込んでいるところに「いいのよ」といった寛容さでその想いも受けとめている。それがとても大事だと思います。

きたやま

子どもだけでなく親たちも、自分の存在を認めてもらうことを求めているのよね。
おち

多くの作品から、傍らに寄り添って共感してもらい、いつの間にか元気になっていくような自然なサポートが感じられます。それはとても大切なことだと思いますが、いくつかの作品に出てきた「していただく」という言葉に、何か支援を与えてもらう場のような利用者とスタッフの関係性が見えてきて、少し気になりました。
柴田

最近、人見知りの母親から「子育てひろばのような場所で遊ばせないと子どもがかわいそうですか?」と質問されました。行かせないと遊ぶ力がつかないと思い込み、不安を募らせているんです。
新澤誠治

「危ないからダメダメ」という親がいたり、一方、子どもが大暴れしているのに、「今、自我を発揮しているから」と止めず、叱ることをしない親がいます。逆に、子育てに自信が持てずに萎縮している親も少なくありません。
柴田

保育の現場でも、「何でも子どもの言う通り」という親が増えています。子どもとの接し方を知らずに親になり、発達理論などの情報から、頭で子育てしようとしている人が多いです。現代の子育ては、子どもに関心のない親がいる一方で、何でも子どもの言う事を聞いてしまうような両極端な問題があるのかもしれません。
おち

孫のわがままに何でも応えてしまう祖父母も増えていますよね。また、今の育児に合わせないといけないと思い込んでいる祖父母も多い。
きたやま

いろんな考え方があることを知ることが大事よね。
奥山

子ども同士が交わる中で、そこから育て方をみんなで一緒に学んでいってほしいですね。

飾らない“あなたの物語”を

おち

育児や子どもに関する情報が溢れる中で、誰もが気張らず自然体で居られる場であることは、とても大事だと思います。今回、始めた詩の部門の作品には、「子育ては素晴らしい!」と謳い上げるような作品が目立ちましたが、実際の子育ては、素晴らしいことばかりではないですよね。さまざまな苦労がある中に、楽しさが見えてくる。ドラマのような絵に描いた幸せはなくても、日常の小さな出来事の中に、物語があると思います。
新沢としひこ
何でもない日常の中で、少し笑えたり、泣けたり。その小さな感動が、利用者の分だけ詰まっているのが、子育てひろばだと思います。心情を素直にあらわせるのが、詩の良さです。文章も、全部伝えようとしなくていい。失敗談でもいいからワンエピソード、“あなたの物語”を届けてほしいですね。
きたやま
次回の募集には、そんな一言を添えてもいいかもしれませんね。スタッフの文章も、「こうあらねば」といった概念に縛られず、それぞれの想いややり方がバラエティに見えてくるといいなと思います。

子育てを支える人たちと親の声を継続して伝えていくことの大切さ

新澤誠治

つまずくことがあってもいい。子育てには、ちょっとした日常の中で得られる喜びがたくさんあります。子どもの成長を家庭でも地域でも、しっかり見続けてほしいですね。今後は、発達に不安があるなど気になる子どもの受け入れや、「リフレッシュひととき保育」(一時預かり制度)などの新たな芽も、見えてくることを期待しています。子育てひろばの歴史は浅く、このような記録をまとめる機会は、これまでありませんでした。保育園では、記録は重要な仕事のひとつです。それぞれのひろばでも話し合い、記録を積み重ねて下さい。また、ぜひこの事業を継続して、子育ての生の声を、全国の親やスタッフはもちろん、議員や行政の方々にも届けてほしいと思います。
新沢としひこ
作品から、昨年の作品集を読んで「私も」という想いで書いて下さったことが伝わってきました。2回続けたことで、この事業が重層的な企画だとわかり、継続することの大切さを痛感しました。回を重ねる度に、また違う変化や課題が、見えてくると思います。そして、さまざまなエピソードを積み重ねることで、より多くの人に「悩んでいるのはあなただけじゃない」と伝えることもできるでしょう。
きたやま
同じ事を、積み重ねることに意味がありますね。
新沢としひこ

保育資格の取得に目覚めた父親の話など、その後が気になる作品もたくさんありました。ぜひ、みなさんも書き続けて下さい。
奥山
子育てひろばも、この「子育てひろば0123育ちの詩事業」も、まだまだこれから。お寄せいただいた声を活かして、さまざまな人が子育てに参加し、親子が地域社会へ育っていけるような場を、今後も全国に広めていきたいと思います。 

 






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