プログラム1.入選者とひろばスタッフの声 入選者と利用ひろばスタッフ数組の方に、日常の活動、作品集への想いや子育ての現状をお話ししていただきました
<コーディネーター>
◆坂本 純子 (NPO法人子育てひろば全国連絡協議会 副理事長)
プログラム2.パネルディスカッション
<パネリスト>(五十音順)
◆おち とよこ氏 (ジャーナリスト、作家、高齢問題研究家)
◆新澤 誠治氏 (子育て支援推進センターみずべの会代表)
◆渡辺 顕一郎氏 (日本福祉大学 教授)
<コーディネーター>
◆中橋 惠美子 (NPO法人子育てひろば全国連絡協議会 理事) |
◆日時 |
平成22年6月13日(日) 14:30〜16:30 |
◆開催場所 |
島根イン青山 |
◆参加者 |
子育てひろばに関わる実践者・スタッフ・行政担当者・研究者など約140名の方に参加していただきました |
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地域子育て支援拠点事業は昨年、第2種社会福祉事業に位置づけられ、量的に拡充する一方で、質の維持や評価についても目指すべき姿を明らかにすることが求められています。
そこでひろば全協では、利用者・スタッフ・ボランティアの方々のひろば・センターに対する想いを「子育てひろば0123育ちの詩」という作品集にし、社会的な啓発と普及につとめるとともに、地域子育て支援拠点事業における活動の指標「ガイドライン」の作成にも協力団体として関わってきました。
公開フォーラムでは
これらの事業を通して見えてきた地域子育て支援拠点の機能、役割について参加者の皆様と共有するとともに、今年度、周知に力を入れていく「ガイドライン」についても紹介しました。 |

<コーディネーター>
坂本 純子
ひろば全協 副理事長 |
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プログラム1.入選者とひろばスタッフの声 14:30〜15:00 |
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まずプログラム1では、入選者と利用ひろばスタッフ数組の方に、日常の活動、作品集への想いや子育ての現状をお話ししていただきました。 |
芝元憲太郎さん&天農容子さん 流山わらしこ保育園子育て支援センター (千葉県) |
2年前、双子の子ども達が1歳の頃、4か月半育休を取った際に、支援センターを利用していました。今回の応募については、センターの方から「こんな募集があるけれど書いてみない?」と勧められ、センターを利用していた頃の事を思い出しながら書いたそうです。書くことによって、子ども達との時間を思い出す大変良い機会になったと語っていただきました。
実際に育児をしてみて、子育ての大変さを実感したそうです。お昼ご飯を食べる時間もなく、自分が自分で無くなるという体験もしました。正直、早く職場に戻ってゆっくりお茶を飲みたい、とお母さん達と同じような子育ての大変さを述べていました。
「育ちの詩」が発行され、全国のひろば・支援センターの話を多くの人と共有でき、その一端をになうことができてよかったと思います。また男性の視点からの支援センターという点も共有してもらえると嬉しいです、とお話ししていただきました。
→ 芝元さんの作品 「父親に子育ての楽しみを教えてくれた支援センター」 |
 入選者の
芝元憲太郎さん |
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まさか芝元さんが「早く職場に戻りたい」と思っているなんて、思ってもみませんでした。 とても楽しそうに利用されていて、お父さんも頑張って子育てをされているなと思っていたからです。
4ヶ月半という決まった期間でも、早く職場に戻りたいと思うものなのかと育児の大変さを改めて再認識されたそうです。 |

支援センタースタッフ
天農容子さん |
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村山順子さん&田辺純子さん ももの木地域子育て支援センター (群馬県) |
田辺先生に応募を勧められ、執筆されたそうです。頼る所がなくつらかった当時の気持ちがよみがえってきて泣きながら書いたと話してくださいました。
自分も自分の事だけで精一杯なはずなのに、支援センターでは何故か大変そうなママに「一緒にこっちでごはん食べない?」「こっちに来て話さない?」と声をかけてしまったそうです。自分が大変だからこそ、大変な人の気持ちが分かるので、ほっておけなかったと語る村山さん。あおぞらサークルという預け合いサークルも立ち上げました。当初、先生から「手伝うからやってみない?」と言われた時は、「え?どうして私なの?私だって大変なのに出来るわけない。」と正直思ったけれど、いざ始めてみると同じような想いをかかえているお母さん達がいっぱいいることもよく分かったそうです。自分が辛い経験をしたから分かる事。短時間センターで預かったり、お母さんが病気の時に自分の子と一緒に子どもをセンターに連れて行ったりという活動を続けてきました。
親や周囲の人に子育てのつらさを言っても、「つらいかもしれないけど、みんなやってきた事なんだから頑張って!」と励まされることが多いそうです。でも、ももの木支援センターでは、励まされることはなく「そうだよね。つらいよね。一人で頑張るのは大変だよね」と、言ってくれたから、通い続けられたのではないかと語っていました。 今は、作品について子どもに話してはいないけれど、子どもが大きくなったらぜひ見せたいと思う。こんな風につらかった時があったという事を子どもにも知ってもらいたいそうです。
→ 村山さんの作品 「支援センターがくれたつながり」 |
 入選者の
村山順子さん |
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田辺さんは村山さんに出会い、素敵な才能のある人だなと感じていたそうです。「とても、育児に疲れていて、その才能が活かされていない、もったいないと思いました。スタッフが、お子さんを見ているからと、休んでもらったりした事もあるほどでしたがが、あおぞらサークルを立ち上げるまでになり嬉しく思います。人と人が関わると人生が変わっていく。このように人生が変わっていった人をたくさん見てきました。ひろば・支援センターとは、そこに集まるお母さん達同志の支え合いで、人が人らしくなっていく場、スタッフも育っていく場だと思います。」
長年、保育園と支援センターに関わってきた田辺さんご自身、センターからもらったものはとても大きいものだと感じていらっしゃるそうです。 |
 センターのスタッフ
田辺純子さん |
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藤岡邦子さん&小林貴子さん NPO法人こあら村子育て交流ひろば
ぽけっとぱ〜く (東京都) |
藤岡さんは、自治体職員として福祉に関わってきましたが、子育てのために退職し、偶然知人から空いている場所があるけれど何かしないかと持ちかけられたことがきっかけとなり「ひろば」を始めたそうです。
近所の公園では、来ているお母さん達が、あまり楽しそうではないなと日頃から気になっていたそうです。知らない人同士で声をかけあい、持ち回りで家に呼び合ったりするストレスや、メールなどで待ち合わせをして公園にでかける煩わしさをどうにか解消できないかと思っていたので、誰でも気軽に集える場にしたいと、「ひろば」をスタートさせたお話をしていただきました。
また、小林さんが初めてこあら村に来た時の様子も話していただき、重度のアレルギーをもつ子を抱えた小林さんをスタッフみんなで支えていこうと話し合い、結束が強まったことも語っていただきました。
→藤岡さんの作品 「作るぞ!居場所、そして・・・」 |

入選者のこあら村
スタッフ 藤岡邦子さん |
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「藤岡さんの作品に書かれているように、私の長男は重度の食物アレルギーでした。乳幼児の頃は特にひどく、食べ物を触った手にふれるだけで、アレルギー反応が出るほどでした。公園に行くと、お菓子を持って歩いている子がいたり、お昼を食べている親子がいたり、とても気を使うので、外を出歩くのも大変でした。」と当時をふり返る小林さん。
ある日、前々から気になりつつも入っていけなかった「こあら村」を思い切って訪ねてみたそうです。
「最初は空いている午前の早い時間から利用を始めました。少し慣れてきたら、『今日はお昼ごはんを食べてみようか? ご飯が終わったら、掃除機もかけるし、みんなで手洗いするから。』とスタッフの方から言ってもらえました。今まで、どうやって他のお母さん達にお菓子の食べ歩きを止めてもらえるように頼むか、かなりのストレスでした。下手をするとお菓子を食べ歩きさせて躾がなってないと言っているように取られたりするので、慎重に言葉を選んで過ごしていましたが、こあら村ではスタッフから声をかけてもらえたのがとてもありがたかったです。 このような負担を、こあら村では自然になくしてくれたからこそ、通い続けられたと思うし、2人目、3人目と産めたと思う。」と締めくくっていただきました。 |
 作品中に出てくる
利用者T子さんの
小林貴子さん |
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プログラム2.パネルディスカッション 15:00〜16:30 |
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テーマ「子育てひろば0123育ちの詩」から見えてきたひろば・支援センターの可能性 |
◆パネルディスカッションを通してのメッセージ |
前半の入選者とひろばスタッフの声を聞き、目頭を熱くされている方もいました。そのあたたかい余韻に浸りながら、プログラム2のパネルディスカッションは始まりました。
最初に、コーディネーターの中橋理事から、「ひろばや支援センターに関わる人たちは皆、どんなひろば・支援センターが良いのか?と日々考えながら活動しています。そして、もっとこんな場所を増やしたい、もっとみんなにひろばを知ってほしいと願っています。ぜひ、会場の皆さんも『育ちの詩』をツールに、ひろば・支援センターをまだ知らない人たちにも広めていって欲しいと思います。」と熱い呼びかけがありました。
そして、「作品集をもとに審査委員の新沢としひこさんが作詞・作曲された『とびらをあけよう』
を皆さんのひろば・支援センターでもぜひ歌って欲しいです!!」と参加者と一緒に合唱し、会場は盛り上がりました。
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<コーディネーター>
中橋 惠美子
ひろば全協 理事 |
◆おち
とよこさん (ジャーナリスト、作家、高齢問題研究家) |
送られてきた作品を読んで、一気に30年前の自分が子育てしていた時代にタイムスリップしたようでした。と、ご自身の子育て経験をまじえながらお話しいただきました。
今のお母さん達はおしゃれでバギーを押して闊歩して、悩みなんてない様に見えるけれども、おちさんが子育てをしていた頃と同じようなこと(発育、ママ友作り、孤独感など)に悩んでいることを応募作品から感じたそうです。
子育てについての情報が山ほどあり、今のお母さん達は一見恵まれているようではあるが、実は情報が溢れており、逆に何が良いのか分からないから余計に大変なのではないか。核家族も多く、出産するまで仕事をしていて地域と繋がっていないので、たくさんの人が「孤育て」に苦労しているのではないか、と語られ、ご自身も出産まで仕事を続け、出産後は行き場所を求めて子どもと公園を渡り歩いた話などもしてくださいました。
「よく来たね。」とそのままを迎え入れてくれる存在の必要性、同じ目線で同じ立場で支えてくれる人がいること。お母さん達も子どもが育つのと一緒に育っていく素晴らしさ。そんな所が、ひろば・支援センターの良い所とおっしゃられました。ひろば・支援センターは、たくさんの可能性がある花束みたいな所。色々な花束の集まり。ちょっと世の中見渡してもない、色々な人が集まる所。ひろば・支援センターで新たに出会った人が町で繋がる、コミュニティーの再生の場にもなっている、と語られました。 |
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◆新澤
誠治さん (子育て支援推進センターみずべの会代表) |
「ひろばに集まっている人たちの生の声を集める」という今回の事業はとても良いと思い、ひろばの価値や役割を考えながら査読した、と語られました。
江東区の部長に「みずべは江東区の誇り。何もしない所が良い」と言われた話から、「何もしない」とはどういう事か?というお話をしていただきました。「何もしない」=日常性 という事をあらためて育ちの詩から感じたそうです。「何もしない」ということで、ひろばの真の在り方、目的などが分かるのではないかとおっしゃられました。作品集の中の、「来てくれてありがとう」「こちらこそ、ここに在ってくれてありがとう」というやり取りを例に挙げ、ひろばで集う人と人との対等性の大切さをお話ししていただきました。
・緊張や不安の心を開かせる所。安心と信頼の世界がつくられる場。
・人間を見るまなざしが基本にあるかどうか。肯定的な理解を持って相手をみる力が必要。
・緊張や不安の心を開かせる所。安心と信頼の世界がつくられる場。
・人間を見るまなざしが基本にあるかどうか。肯定的な理解を持って相手をみる力が必要。
・スタッフ・サポーター・親同士の出会いと交流の場。気づき、発見の中で、勇気を引き出していく。
・人と人とが関わる場所。つながりを創造し、温もりをつくり、自分を見つめ直し、取り戻していく場。
・優しい笑顔。優しい言葉。たくましい支え手。
・子ども同士や様々な大人に出会い、親から離れることを学び、成長していく場。
新澤先生の思うひろばの役割を6つ挙げられ、最後に、「何もしない」ということは、ひろばの在り方を熟考して、支援者としてそうあろうと決意することではないかと語っていただきました。 |
 新澤誠治さん |
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◆渡辺
顕一郎さん (日本福祉大学
教授) |
渡辺先生が、数年間にわたり調査研究を行ってこられた結果をもとに、今年の春、地域子育て支援拠点事業におけるガイドラインが完成しました。そして、ガイドライン完成後に先生ご自身が、「0123育ちの詩を読んでみると、ガイドラインの内容が間違っていなかったということをより強く認識することができた。」と語られました。具体的に、「育ちの詩」の一編を引用しながら、ガイドラインに通じるキーワードが沢山詰まっていることも紹介されました。
社会的には、男女平等になって女性の意識も変化する中、出産後、いきなり昔からの母親像を押し付けられてしまうギャップについても言及され、「子どもも母親も孤立しがちな現代の子育ての状況から脱するためには、子どもは子ども同士、親は親同士という時間も大切」
「“母性神話”が根強く残る日本特有の文化もお母さんたちを苦しめている要因のひとつ。」
「“育児が大変だから助けて”と本音をさらけ出し、救いの手を求めることがどれだけ難しいことか・・。とかく指導者的になりがちであるスタッフは、対等な関係として関われるよう心がけが必要。」といったことが述べられました。
また、拠点は、地域につないでいく重要な役割を持っていて、“最近のお母さんは〜”と批判的な事を言うシニア世代もいるが、実際には、「最近のお母さんはとてもよく頑張っている!」という根拠の一例をデータを用いながら示されました。 |
 渡辺
顕一郎さん |
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◆パネルディスカッション |
今も子育ての大変さや悩みは変わっていないことについて意見が交わされました。それは問題の根っこが同じ所にあり、解決されていないことであり、更に、マスコミの影響等や情報化社会など現代特有な問題も加わって、今の子育てはもっともっと大変になっている。その解決策のひとつとして、今の時代に合った、多様な人との関わりを拠点が担っていくのだという話がされました。
シニア世代の人の中には、「子育て大変だよね。私も大変だったもの・・」という人と「私も我慢していたんだから、あなた達も頑張りなさい」と言う人がいますが、子育て経験者として『我慢の申し送り』は止めなくてはならない、とコーディネーターからの話で締めくくられました。
最後に、新澤先生が「書く事によって自分を見直すことができるので、ぜひ今年度の募集に応募してみてください。」と新しい募集についても話されました。
また、拠点は、地域につないでいく重要な役割を持っていて、“最近のお母さんは〜”と批判的な事を言うシニア世代もいるが、実際には、「最近のお母さんはとてもよく頑張っている!」という根拠の一例をデータを用いながら示されました。 |
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